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2024.09.07
次世代医療基盤法と個人情報保護:医療データの活用と守るべきプライバシー
現代医療の発展において、膨大な医療データの活用が重要な役割を果たしています。日本では、こうしたデータの活用を促進するために、2017年に「次世代医療基盤法」(次世代医療基盤整備法)が施行されました。この法律は、個人の医療データを基にした研究開発を進め、より効果的な治療や新薬の開発を目指すための基盤を整備するものです。しかし、医療データの活用に際しては、個人情報保護の観点から慎重な取り扱いが求められます。
本ブログでは、次世代医療基盤法の概要と個人情報保護の重要性について詳しく解説します。
次世代医療基盤法とは?
次世代医療基盤法は、国民の医療情報を匿名化・集約化し、それを医療研究や産業に活用するための法律です。具体的には、医療機関や研究機関から提供される医療データを集積し、それを活用することで、新薬の開発や診断技術の向上、個別化医療(いわゆるテーラーメイド医療)を推進することを目指しています。
次世代医療基盤法は、以下のような点で特徴的です。
- 医療データの収集・利用:この法律に基づき、国民の医療情報が匿名化された形で収集され、指定された研究機関や医療機関に提供されます。これにより、医療や治療の改善、医薬品の開発に役立てることができます。
- 匿名加工情報の活用:法律では、個人が特定されないように加工された「匿名加工情報」を活用することが前提となっています。この情報は、個人を識別できない形で提供されるため、プライバシーの保護に配慮した運用が求められます。
- 認定事業者制度:データの適正な管理と利用を確保するため、医療情報を取り扱う事業者は、厚生労働省によって認定された事業者に限られています。認定事業者は、個人情報保護やセキュリティに関して厳しい基準をクリアした企業や組織であり、データの漏洩や不正利用を防ぐ仕組みが整えられています。
個人情報保護の重要性
医療データの活用は、医療技術の進展に大きく寄与する一方で、個人情報保護の観点からは非常に敏感な問題です。特に、医療情報は個人の健康状態や病歴といった極めてプライバシーに関わるデータが含まれるため、慎重な取り扱いが求められます。
次世代医療基盤法においても、個人情報保護のために以下のような措置が講じられています。
1. 匿名加工情報の活用
個人情報の保護において、次世代医療基盤法の中心的な役割を果たしているのが「匿名加工情報」です。匿名加工情報とは、特定の個人を識別できないように加工された情報であり、個人を特定できない状態であれば、研究や産業利用に提供されることが認められています。
しかし、匿名加工情報の作成には十分な注意が必要です。例えば、データが他の情報と結びつけられることで、再び個人が特定されるリスクも存在します。そのため、データの加工方法や提供する際の手続きにおいては、細心の注意が払われています。
2. 同意取得の原則
医療データを活用する際には、原則として患者本人の同意を得ることが求められます。ただし、次世代医療基盤法では、匿名加工情報に限っては個別の同意を必要としない場合もあります。これにより、迅速かつ効率的に医療データを収集・活用できるようになりますが、その分、患者の権利を守るための仕組みが強化されています。
具体的には、データの提供を拒否する権利(オプトアウト)が保障されており、患者は自分の医療情報が収集・利用されることを拒否できる仕組みになっています。このオプトアウトの制度を通じて、個人情報保護と医療データ活用のバランスが図られています。
3. セキュリティ対策の強化
医療データは非常に価値が高いため、サイバー攻撃の標的になることがあります。ランサムウェアや不正アクセスによる医療データの流出は、個人のプライバシー侵害に加えて、企業や医療機関の信用を著しく損ねる可能性があります。そのため、次世代医療基盤法に基づく認定事業者には、厳重なセキュリティ対策が求められています。
認定事業者は、医療データを取り扱う際に高度な暗号化技術を導入したり、データのアクセス権限を厳密に管理するなど、セキュリティ対策を徹底しています。また、万が一データが流出した場合には、迅速に対応し、被害を最小限に抑えるための対策が講じられています。
次世代医療基盤法の意義と課題
次世代医療基盤法は、医療データを活用することで、医療の質を向上させるだけでなく、日本の医療産業の発展にも寄与する重要な法律です。特に、個別化医療の実現に向けて、患者一人ひとりに合わせた最適な治療法を提供するための基盤を整備する役割を果たしています。
しかし、個人情報保護とのバランスを取ることは依然として課題です。医療データは非常にデリケートな情報であるため、収集や利用の際には患者のプライバシーに十分な配慮が求められます。また、匿名加工情報であっても、データが悪意を持った第三者に渡った場合、リスクが伴うことは避けられません。
そのため、法制度の運用においては、透明性を高め、患者や国民が安心して医療データを提供できる環境を整えることが必要です。例えば、データ提供の拒否権や情報の非公開選択権が保障されていることを周知し、医療データの活用が個人の健康や社会全体にどのような利益をもたらすかを広く説明することが重要です。
終わりに
次世代医療基盤法は、医療の未来を切り開くための重要な法律であり、医療データの活用によって医療技術の進展や新たな治療法の開発が期待されています。しかし、その一方で、個人情報保護の観点からは慎重な取り組みが求められます。匿名加工情報の利用や患者の同意取得、セキュリティ対策を徹底することで、安心して医療データを提供できる社会を構築することが重要です。
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