INFORMATION
お役立ち情報
2024.11.01
保健医療福祉分野におけるプライバシーマーク認定指針・第5版の改訂ポイントについて
2023年に改訂された「保健医療福祉分野におけるプライバシーマーク認定指針・第5版」は、医療や福祉機関が個人情報を安全に管理するための基準を示しています。この指針は、個人情報の取り扱いに関するリスクを最小化し、患者や利用者のプライバシーを保護することを目的としています。第5版への改訂において、いくつかの重要な変更点が加えられました。以下では、主な改訂ポイントについて詳しく解説します。
1. リスクベースアプローチの強化
第5版の最大の特徴の一つとして、リスクベースアプローチが強化されました。リスクベースアプローチとは、各組織が直面するリスクの大きさや頻度に応じて適切な対応を行う考え方です。医療や福祉分野では、患者の病歴や治療記録、生活状況といった極めてセンシティブな情報が取り扱われるため、リスクに基づいた適切な対策が求められます。この点で、組織は日々変化するリスクに対して柔軟に対応する必要があるとされています。
たとえば、頻繁に使用される情報システムやアプリケーションにおけるセキュリティホールのリスク分析を行い、必要な対策を迅速に導入することが求められています。また、外部委託業者による情報漏洩のリスクも重視されており、委託先の監査やリスク評価の強化が推奨されています。
2. サイバーセキュリティ対策の強化
デジタル化が進む中で、サイバー攻撃に対する防御力を強化することが不可欠です。第5版では、サイバーセキュリティ対策の強化が一層求められるようになっています。具体的には、不正アクセス防止やランサムウェア対策を目的とした具体的な技術的対策が含まれています。情報システムやネットワークに対する監視体制を強化し、不正アクセスを未然に防ぐための設定やパッチ管理が必須とされています。
さらに、日々のデータバックアップの実施や、緊急時に備えた復旧手順の確立も推奨されています。データの改ざんや漏洩が発生した際に、迅速に対応できる準備が整っていることが重要です。これにより、サイバー攻撃により患者や利用者のプライバシーが侵害されるリスクを低減できます。
3. 個人情報の取り扱いに関するガイドラインの見直し
医療や福祉分野においては、診療記録や介護サービス記録など、個人情報の利用が患者の治療やケアの質に直結します。第5版では、こうした情報の取り扱いに関して、さらに具体的な指針が追加されました。たとえば、患者や利用者の情報を業務上利用する際の範囲や目的を明確にし、不要な情報を収集・保存しないよう徹底することが求められています。
また、紙媒体での情報管理に関しても、アクセス制御や持ち出しのルールが厳格化されました。電子データと同様、紙媒体の資料についても適切にロックされ、外部の第三者がアクセスできないような環境が必要とされています。さらに、不要となった情報は適切な方法で廃棄し、廃棄証明書の発行なども推奨されています。
4. 利用者の権利を保護するための体制の整備
第5版では、利用者や患者の権利を尊重する姿勢が一層強調されています。具体的には、情報開示や訂正、削除請求に対する対応が迅速かつ適切に行われることが求められています。これにより、利用者が自分の情報の取り扱いに関して透明性を感じられるようになります。
また、情報漏洩や不適切な情報取り扱いに関する苦情処理体制の整備も求められています。万が一情報漏洩が発生した場合には、迅速に利用者に通知し、影響範囲や再発防止策についても説明が行われるべきとされています。
5. 定期的な教育・研修の義務化
保健医療福祉分野では、多くのスタッフが患者や利用者の個人情報に接する機会が多いため、全スタッフに対する個人情報保護に関する教育が非常に重要です。第5版では、全スタッフが年に一度以上の研修を受けることが義務付けられています。この研修では、最新の個人情報保護の法令やガイドラインに関する知識を共有し、スタッフが情報保護の重要性を理解することが期待されています。
また、新しいスタッフが加入した際には、速やかに個人情報保護に関する基礎的な教育を実施することも推奨されています。これにより、すべてのスタッフが個人情報の取り扱いについて一定の理解と意識を持つことができ、情報漏洩のリスクが低減されます。
6. 業務委託先への管理体制の強化
医療や福祉機関では、外部の委託業者に対しても個人情報を取り扱う業務を委託する場合が多くあります。そのため、委託先の選定や管理についても厳格な基準が設けられました。第5版では、委託業者に対する個人情報保護の基準を文書で明示し、定期的な監査や評価を行うことが求められています。
特に、委託先が個人情報を取り扱う際のリスク評価や、業務の内容と保護レベルの見直しを定期的に実施する必要があります。これにより、業務委託先での情報漏洩リスクを最小限に抑えられ、利用者の情報が外部で適切に管理されることが保証されます。
まとめ
第5版の改訂ポイントは、保健医療福祉分野における個人情報保護を強化し、患者や利用者のプライバシーを守るための具体的な対策が示されていることが特徴です。リスクベースアプローチやサイバーセキュリティ対策の強化、利用者の権利を保護するための体制整備など、時代の変化に対応した包括的な改訂が行われました。これにより、医療・福祉機関はさらなる安全性と信頼性を提供できるようになるでしょう。
今後、各機関がこの指針に基づいて適切な情報管理体制を構築し、安心して利用できるサービスを提供することが期待されます。
お問い合わせ
営業時間:9:30~19:00(メールによる受付は24時間)定休日:日曜日
事前のご予約で夜間、土日祝日でも対応可能