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2025.02.03

学習用端末における個人情報取扱いの現状と今後の課題


2024年7月、読売新聞の記事において、学習用端末における個人情報取扱いについての問題が提起されました。
それは、一部の自治体が、子供の個人情報を株式会社リクルートに直接取得し管理させていたという内容でした。
また、保護者に説明がないまま海外の事業者に委託したり、リクルートの一般向けアプリの機能改善に利用されたりもしていました。
※読売新聞記事「小中学校の学習端末利用で児童生徒の情報をアプリ業者が直接取得・管理…文科省が全国調査へ」(2024.7.14)参照
 
この件について、個人情報の不適切な取扱いであるとした文部科学省は、全国自治体の調査に乗り出しました。
今回は学習用端末における個人情報の取扱いについて、リクルートの個人情報取扱いにおける問題点、また、現状(全国調査を通してどのような結果が出たか)と今後の課題について見ていきたいと思います。
 
1. リクルートの個人情報取扱いにおける問題点 
改めてリクルートの個人情報取扱いにおける問題点を今一度見ていきましょう。
多くの自治体は、学習用端末いわゆる学習用タブレットに民間事業者の学習用アプリを導入しています。そしてそのアプリを通じて、子供の氏名、生年月日、学習履歴などが収集されます。
リクルートが提供するアプリもこれらのひとつでしたが、個人情報の取扱いにおいて不適切な点が多くありました。
その問題点とは、大きく分けて以下の4つです。
 

(1)個人情報を直接取得・管理する事業者がリクルートであった点

文部科学省は本来、民間アプリを利用する場合であっても、個人情報を取得・管理する主体はあくまで教育委員会や学校を想定していました。教育委員会や学校が本人(子供たち)から個人情報を直接取得し、その情報を民間事業者に委託するという流れを想定していたのです。
しかし、実際はリクルートが直接本人(子供たち)から個人情報を取得していました(リクルートのアプリ内プライバシーポリシーに子供たちや保護者が同意するという形をとりました)。
これは、子供たちの個人情報が制約なく利用できてしまう危険性をはらみます。というのも、一般的に民間事業者がプライバシーポリシーを掲げる場合、その利用目的の多くは商業利用のために広く設定されるからです。これは後の(2)の問題点へとつながります。
 

(2)リクルートが事業者自身の利益のために利用した点(商業利用)

リクルートは、今回のケースで取得した個人情報を、一般向けに販売している同アプリの機能改善に使用していることを認めました。これは自治体業務の範囲を大いに超えているといえるでしょう。
 

(3)保護者の同意なしに海外に個人情報が委託されていた点

小中学生全員に一人一台支給される学習用端末は義務教育の場で使用されるため、保護者が個人情報の取扱いにおける同意を拒むことは通常難しいとされます。今回のケースは、保護者の同意なしに海外に個人情報が委託されていたのでより深刻です。
また、海外における個人情報の取扱いは日本の法令が適用されない場合もあるので、就学情報は国内で取り扱うのが望ましいという声もあります。やむをえず海外の事業者に委託せざるを得ない場合には、その必要性をしっかりと説明しなければいけません。
 

(4)そもそも学習用端末における個人情報の取扱い方についての議論が不十分であった点

国と自治体との間で、学習用端末における個人情報の取り扱いに対する意識の齟齬があったと考えられます。学習帳端末を学校教育に取り入れる段階で、国が指揮を上手くとれていなかった可能性もあります。
個人情報の不適切な取り扱いがないよう、文部科学省は、「教育データの利活用に係る留意事項のポイント」を公開しました。
※文部科学省「教育データの利活用に係る留意事項のポイント」参照
https://www.mext.go.jp/content/20240328-mxt_syoto01-000028144_2.pdf
 
目指すのは、「教育データの利活用」と「安全・安心」の両立です。
教育委員会や学校に対して、教育データを利活用するために留意してほしいポイントがここには書かれています。
 
2. 学習用端末における個人情報取扱いの現状 
文部科学省は学習用端末における個人情報の取扱いについて、全国の教育委員会を対象とした調査を行いました。
その結果、興味深いことがわかりました。ここでは調査の概要と、調査結果(一部)を見ていきたいと思います。
 

(1) 調査の概要

各教育委員会が個人情報の取り扱いについて改めて自己点検をすること、また、学習用端末における個人情報の取扱いの実態を把握することを目的に調査が開始されました。
調査期間は、2024年7月16日〜8月8日です。
 

(2) 調査結果(一部)

個人情報を取得する際、本人(子供たち)や保護者の同意を得ているかという質問に対して、全体の約55%が取得していないと回答しました。
また、全体の11%がそもそも利用目的の特定すらしておりませんでした。さらには、全体の26%が本人(子供たち)や保護者に利用目的を明示していませんでした。
 
3. 学習用端末における今後の課題 
今回のケースを受けて、リクルートは、2026年4月をめどに学習用アプリを通じた個人情報の直接取得を取りやめると明らかにしました。
本来、学習用端末は義務教育の一環として使用するため、個人情報取扱いの同意に対する拒否権がありません。そのため一般向けサービスの利用目的よりも可能な限り具体的に特定することや、特定された利用目的の達成に必要最小限の範囲内で保有することが必要です。
利用目的に関してどのような規律を適用するべきかは、今後も大いに検討する必要があるといえるでしょう。

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