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2025.10.27
個人情報とSNS投稿ガイドライン── 浦和レッズ の声明を契機にプロの視点から考える投稿リスクと保護策
はじめに
スポーツクラブに限らず、企業や団体が公式に「SNS上での誹謗中傷」や「撮影・投稿時の個人情報配慮」について言及するケースが増えています。先日、浦和レッズが公式に、SNS上における選手・スタッフへの誹謗中傷を「断じて容認いたしません」と声明を発表しました。
こうした発表は、単なるスポーツクラブの対応にとどまらず、個人情報保護/肖像権/プライバシー配慮の観点から、広くビジネスやコミュニティ運営においても参考になるものです。本稿では、個人情報保護を専門に扱う立場から、浦和レッズの発表内容を整理しつつ、SNS投稿時の注意点・ガイドライン策定におけるポイントを解説します。
浦和レッズの発表内容と背景
まず、クラブが公表した主なポイントを整理します。
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2025年9月25日、公式サイトで「ソーシャルメディアにおける誹謗中傷について」というタイトルで声明を発表。 「一部選手の個人SNSアカウントに対し、ダイレクトメッセージやコメントを通じて、人格を傷つけるような誹謗中傷を複数確認しております」 と明記しています。
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同声明では、「これは、当事者の心身に影響を及ぼすだけでなく、批判や叱咤激励の範囲を超えた、尊厳を脅かす明白な人権侵害です」という強い表現で、クラブとして人権・尊厳の観点からも対応の必要性を訴えています。
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また10月20日にはあらためて「誹謗中傷、あるいはそのように受け取られかねない行為は絶対にやめてください」と再呼びかけています。
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さらに試合会場における撮影・投稿のマナーについても、クラブ側から注意喚起されています。例えば「本人の許諾なしにSNS等に投稿することはお控えください」という表現が報じられています。
このように、クラブは「選手・スタッフの人権・肖像権」「ファン・サポーターと選手の関係性」「SNS利用」「撮影・投稿マナー」という複数の観点から、個人情報・プライバシー保護に関する対応を明文化しています。
個人情報保護・SNS投稿のリスク(プロ観点から)
個人や組織がSNS投稿や撮影・投稿ガイドラインを策定・遵守すべき理由として、以下のようなリスクがあります。
1. 肖像権・プライバシー権侵害
撮影された人物が明確に識別可能で、本人の同意なしにSNSに投稿された場合、肖像権・プライバシー権の侵害となり得ます。特に、クラブが「本人の許諾なしに投稿を控えてください」と呼びかけているのはこのためです。
企業・団体においても、社員・関係者・来訪者などが映り込む写真を無断でSNSなどに公開すると、法的・信頼的な問題を生じる可能性があります。
2. 誹謗中傷・名誉棄損
クラブが「誹謗中傷を断じて容認しない」と声明したように、SNS上での悪意ある投稿は、個人や団体の名誉・心身に悪影響を及ぼし、法的な責任(名誉棄損、侮辱など)を問われることがあります。
組織としては、ファン・顧客・スタッフなど投稿に関わる関係者全体への啓発が必要です。
3. 個人情報の流出・二次的被害
SNS投稿時に、顔写真だけでなく、名前・所属・背番号・自宅近隣などの属性が併記されたり、位置情報が記載されたりすると、個人情報流出やストーキング・犯罪被害へのリスクが高まります。
特にスポーツクラブの試合会場など多くの人が出入りする場所では、撮影・投稿時の配慮が重要です。
4. ブランド・信頼の損失
企業・団体では、投稿マナーの不備がファン離れ・顧客離れ・社会的評判の低下を招くことがあります。クラブのように「安心して活動できる環境を守ることが何よりも重要」と宣言することは、ブランド保護・ファンとの信頼構築という観点でも非常に意義があります。
投稿ガイドライン策定における5つの実務的ポイント
プロとしてアドバイスすると、SNS投稿・撮影・共有にあたって、以下のようなガイドラインを設けることが有効です。
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同意取得ルールの明確化
撮影対象(選手、スタッフ、ファン)には、撮影・投稿前に明確な同意を得るように定義します。顔がはっきり分かる、名前・背番号が特定できる、などは“要同意”とするとよいでしょう。
例えば「顔が写る場面では同意を取得」「背番号・氏名が特定されないよう配慮」など。
またクラブが掲げる “本人の許諾なし投稿を控える” という考え方を概ね踏襲することが望ましいです。 -
誹謗中傷・コメント監視の仕組み化
投稿後のモニタリング・報告窓口を設け、選手・スタッフに対する悪意あるコメントやメッセージを早期に検知・対応できる体制を整えましょう。浦和レッズが「ダイレクトメッセージやコメントを通じて、人格を傷つけるような誹謗中傷を複数確認している」と明記しているのは、こうした体制を意識している証左です。 -
投稿内容の最小化・情報取捨選択
投稿に際して、必要最小限の情報にとどめることが重要です。位置情報・個人の属性(出身地、家族構成など)などは、公開することで不要なリスクを伴います。映像・写真も「背景に個人が特定できる情報が写り込んでいないか」「撮影場所・時刻が特定されうる内容でないか」を確認してください。 -
リスク想定と修正プロトコル
もし投稿後に問題が発覚した場合、速やかに削除・訂正・謝罪を行うための社内フローを策定しておきます。クラブが「今後もSNS含めた交流を継続するために、皆さまの理解と協力をお願い致します」と呼びかけているように、信頼維持には迅速な対応が鍵です。 -
教育・啓発・継続的な見直し
出演者(選手・スタッフ)、撮影担当者、ファン・サポーターなど多様なステークホルダーに向けて、定期的な教育・啓発を行いましょう。SNS利用ルール・肖像権・プライバシー配慮を明文化し、変更があれば都度通知・見直す体制を持つことが望ましいです。
なぜ今、クラブがこのような声明を出したのか?
その背景として、以下のような社会・法制度的変化が考えられます。
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昨今、SNS投稿が原因で著名人や一般人が誹謗中傷被害を受け、法的対応に至るケースが増加しています。企業や団体も「自身の関係者が巻き込まれないように」に加えて「投稿が自身のブランド価値を損なわないように」という観点から対応強化を図っています。
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「個人情報保護法」やその他関連法令(例えば「肖像権」「プライバシー権」)が意識される中、スポーツクラブも単なるエンタメ提供者から「社会的責任を持つ組織」へと役割が拡大しています。
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ファン・サポーターとの双方向コミュニケーションをSNSで深める中、安心・安全な場を維持することがクラブ運営にとっても重要な課題となっています。浦和レッズが「選手・スタッフとファン・サポーターのコミュニケーションが健全に保たれるべき」と述べているのはその表れです。
これらの背景を踏まえて、クラブが発表した声明は、ただの“注意喚起”ではなく、組織運営・リスクマネジメント・ブランド戦略を含んだ“包括的な対応”と言えます。
総括:組織が学ぶべき教訓と今後の展望
本稿でご紹介したように、SNS投稿・撮影・共有時には「個人情報(名前・写真・属性等)」「投稿の受け手(ファン・一般・社内)」「被写体本人の意志・同意」「投稿後の監視体制」など多面的な配慮が必要です。
浦和レッズの声明は、スポーツ界にとどまらず、企業・団体・地域コミュニティにとっても有用な“模範”と言えます。
これからSNS運用を行う際には、単に「投稿して終わり」ではなく、投稿前のチェックリスト・関係者教育・万が一の対応フローを備えることで、安心・信頼を損なうリスクを最小化できます。
また、時代の変化に応じて撮影技術・SNS機能・プライバシー意識も変化していくため、ガイドラインも定期的に見直すことが不可欠です。
最終的には、「人権・尊厳を守る」という観点が、個人情報保護・SNS運用・投稿マナーにおいても根底にあるべきです。浦和レッズの言葉「安心して活動できる環境を守ることが何よりも重要」 は、まさにその指針と言えるでしょう。
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